戻ってきた旧校舎の入り口。
そこには
“ 立 ち 入 り 禁 止 ”
看板が寂れてるせいか、文字が浮き出て読みやすい。
C r a n e - 万 羽 鶴 -
俺は看板を無視してフェンスを乗り越え、
校舎の周りをぐるぐると回る非常階段から屋上へ向かった。
足下に舞い降りた、折り鶴。
翼を広げた、飛べない鳥。
空を見上げると、狭い空が顔を出す。
桜が青を支配する。
非常階段も、桜の絨毯で敷き詰められている。
ガチャ
「あ」
扉を開けると、フェンスの向こうに少女の後ろ姿。
おそらく、いつもいたのはコイツだろう。
氷帝の制服を着て、フェンスに寄りかかっている。
横にはコレと同じように几帳面に折られた、
カラフルな折り鶴が入った紙袋が置いてあった。
「・・・・・・・・おい。」
「!」
その女は一瞬肩をびくつかせた。
「そこで、何やってんだ?」
が、俺が聞くとすぐに振り返り、言った。
「・・・・・・・・アンタ誰?」
コイツ・・・・誰って聞いた?
この俺様に?
久々に言われたな、誰?なんてよ。
多分、今氷帝で俺様のことを知らない奴はコイツが最初で最後だろう・・・。
・・・・・気に入った。
「・・・あーん?お前氷帝生だろ?」
俺はそう言いながら女に近づく。
「そんなの制服見れば分かるでしょ。貴方も氷帝生なんだから。」
「のくせに俺様のこと知らねぇのかよ?」
「だから誰って聞いてるんだけど?」
本気で知らねぇのか・・・おもしれぇじゃねぇの・・・
「ククッ・・・・俺は生徒会長だ。」
「・・・ふーん・・・。それで、あたし注意しに来たわけ?」
相変わらずフェンスの向こうにいる少女。
フェンスごしの会話。
生意気な口ぶり。
面白い女を見つけたようだ。
「わざわざんな事しにこんなとこ来るかよ。コレを返しに来ただけだ。」
「ふーん。それはどうも。」
俺がフェンスの穴に鶴を持った手を通し鶴を見せると、
女は鶴を拾い上げて・・・・
「・・・っおい!」
鶴の入ってる紙袋ではなく、すぐに非常階段の方に投げ捨てた。
つまり、反対側。
「いいの、いいの。それ数入れてないし。」
「あーん?良いわけねぇだろ。俺様がわざわざ持ってきてやったんだぜ?」
「別に頼んでないし。」
そう言いながらながら、少女はフェンスを楽々と越え、
転がっていたスクールバックを拾い上げ、非常階段の方に歩き出す。
「あぁ?俺様に対してな「それより早くしないと遅刻するよ、生 徒 会 長 さん。」
ソイツは俺の台詞が終わる前に、そう言って振り返ると不敵に笑った。
そして女は非常階段をカタカタと下りていった。
女が去った後、俺はふと空を見上げてみた。
さっきより広くなった青い空。
さっきより強くなった白い風。
さっきより多くなった桃色の桜。
春。出会いの季節。
俺は変な女に出会った。
俺は鞄を持ち直し、非常階段を下りていく。
「ん?」
さっき風に飛ばされたのだろう。
足下には見覚えのあるもの。
キーーンコーーンカーーンコーーン
近くで予鈴が鳴り響く。
足下に舞い降りたままの、折り鶴。
翼を広げた、飛べない鳥。
空を見上げると、狭い空が顔を出す。
桜が青を支配する。
おい
空、桜、白、春、そしてあの女。
お前らはそんなに俺に拾って欲しいのかよ?
この真っ白な折り鶴を。