水曜日。今日は部活が無い。
いつものように西側の門の前で車を降りる。
春。いつもより強い風。
空は桜に支配される。
青は桃色に染められる。
ふと見上げれば、
東京の、狭く情けない青が顔を出す。
C r a n e - 万 羽 鶴 -
ヒューーーーー
「あ!跡部先輩!!」
後ろから後輩の声。
「おはようございます!!」
桜吹雪の中で、にっこりと笑う後輩。
「鳳・・・宍戸はどうした?」
「宍戸さんですか?なんか今日日直らしいです。」
「そうか」
「はい。何かご用でもあったんですか?」
「そうじゃねぇけど。」
4月。
この学園で迎える、3度目の春。
最初は長く感じた校門から校門への道も、
最初は桜吹雪に戸惑ったこの並木道も、
最初は鬱陶しかった女子の声の響く道も、
もう3年目。
とっくに慣れた。
とっくに飽きた。
そして、毎日やってくる感情。
ヒューーーーー
退屈。
「良い天気ですね。」
ふと、後輩が口を開く。
春。いつもより強い風。
空は桜に支配される。
青は桃色に染められる。
ふと見上げれば、
東京の、狭く情けない青が顔を出す。
でもなんだか眩しくて。目を細めてみる。
桜が眩しいのか、空が眩しいのか、それとも・・・・・・
「あっ。」
突然、後輩が指を指す。
青と桃色の中に、
ヒラヒラと風に乗る白。
「あれ、なんでしょう?」
すーっと俺の足下に降りてくきた白い陰。
桜の絨毯にポツンと白い陰。
あっという間に桜に埋もれた白い陰。
ヒョイと拾いあげれば正体が分かる。
「・・・・折り鶴・・・ですね。」
真っ白な折り鶴。
翼を広げた、飛べない鳥。
おそらく、旧校舎から来た白。
そんなことを思いながら鳳と別れ、テニスコートを通り過ぎ、
妙に新しい門に不似合いな旧校舎を見上げた。
校門の先に校門がある氷帝学園。
旧校舎は車通りの多い道に面していて、校門の外にある。
そして氷帝にはもう一つ、旧校舎へと続く門がある。
監視カメラはないが、施錠されているはずだし、
かつて幽霊騒動があった為生徒はほとんど近づかない。
しかも旧校舎は周りを一周フェンスで囲まれている。
そう考えると、一人で考え事をするには一番良い場所だ。
でも
此処に本当に人がいるんだろうか。
初めて自分の意見を疑ってみる。
古く、薄気味悪い旧校舎。
幽霊騒動が起こったのも頷ける。
忍足があり得ないと言った理由が分かる。
でも、
確かに誰かいる。
疑っても、やはりそんな気がした。
そして、鳳と会った所へ引き返す。
テニスコートの方より、こっちのが入りやすいはずだ。