強引に約束させたくせに、
あたしが反論する暇さえ与えてくれなかったくせに、
一方的に気持ちをぶつけてきたくせに、
あたしが悪いみたいに向けられた、視線。
・・・・・・・確かにあの振り方は悪いけどさ・・・・
C L o v e r 1-3
「・・・・・・・・・またやっちゃったじゃん!ほんとはあんな振り方したくないっつーの!」
まだあの視線で胸がズキズキして、
一人で体育館に向かって叫んでみる。
ペタンと座り込むあたし。
傷つけたくないけど、傷つける。
ゴメンね、後輩君。
“人を好きになる”って事は凄いことだって分かってる。
だから、あなたの気持ちの大きさも分かる。
“人に告白する”って事は凄いことだって分かってる。
だから、あなたの気持ちの大きさも分かる。
なのにあたしは、
気持ちが大きいと分かる人ほど傷つける。
でも、そうしないと貴方はあたしを諦めないでしょ?
でも、そうしないと貴方はあたしに縛られ続けちゃうでしょ?
あなたに成長してもらいたいから、
もっと良い恋しなさいって思うから・・・・・・・ゴメンね。
言い訳並べてみるとちょっとはいい人に見えるけど、
やっぱりあたしは悪い人。
こんな言い訳並べてみても、
ほんとの所はきっとね、
自分を守るために、人を傷つけるんだと思う。
「・・・・・・・・・アンタ馬鹿?」
後ろから聞こえた声。
今日の朝、初めて聞いたのにもう聞き慣れた声。
おわかりでしょう。
越前リョーマです。
「・・・・・・いつからいたの?」
「ずっといたけど?アンタが此処行くの見えたから。」
「じゃ、全部見てたわけか。」
「中学の後輩?」
「だったら何?」
「別に。」
「何、のぞき?・・・・・・趣味悪。」
「・・・・アンタは性格悪いね。」
「・・・・・・・・そうですよ。」
「・・・・・・・・・」
「あたしは、平気で人を傷つけちゃうような最悪な人種ですよ。」
「嘘。」
「え?」
「ほんとは平気じゃないんじゃない?」
「・・・・なんで・・・?」
「鏡で自分の顔見れば?泣きそう。」
「・・・・・・・・・っ・・・そんな事ないよ!大丈夫大丈夫!」
なんで?
「アンタさ、よほど最悪な人間じゃない限り、人を傷つけると自分も一緒に傷つくって、知らないでしょ。」
「・・・・・・・」
「告白って相手の気持ちが大きいほど、こっちの負担も大きいんだよね。テニスと一緒。」
「・・・・・・・・・」
「それに今無理しても無駄だと思うんだけど。じゃ、俺校門で待ってるから。」
何で分かるの・・・?
「・・・・・ちょ・・・待っ・・・・・」
ポタポタと落ちる涙。
止めたくても、止まらない。
何で・・・・・?
なんで分かったの・・・?
今、越前の目が怖いと思った。
でも
励まされたんだよね・・・・?
ありがと、越前。
それからしばらくして、校門へ行った。
「・・・・遅くなってゴメンね?」
「You're so late. I got tired of waiting for you. 」{遅すぎ。待ちくたびれた。}
「・・・・だからゴメンって言ってるじゃん。」
「Go to my home.」{帰る。}
「ちょ・・・ちょっと待ってよ!!」
越前はスタスタと先を行く。
***
「で?あたしに何か用?」
少し歩いてから聞いてみた。
「Well,,,Consultation of love?」{うーん。恋の相談かな?}
「・・・・・・・・は?もう一回言ってみ!?」
「・・・・何て言ってるかわかんなくなった?」
「そんな訳ないでしょ!ってか、今日会ったばかりの人に普通言うか?!」
「だってアンタ、先輩の親友でしょ?」
・・・・・・・・・先輩?
「・・・・・・・・・・・・・・・そうだけど?」
「好きなんだよね、あの先輩。」
「・・・・・・・・だから?」
「だからって?最初に言わなかったっけ?」
「協力して欲しいと?」
「そ。」
「無理です。断らせて頂きます。絶対ヤダ。それにあたしに得なんて全くないでしょ?」
「じゃ、中等部にさっきのことバラすから。」
「・・・・・・は?」
そう言って越前はニヤっと笑う。
「アンタ、あの人の事よく知らないでしょ。あの人って、青学でも人気なんだよね。特に中3。」
「・・・・ふーん・・・」
「だから、中等部の奴らもあの人が青学に入学したこと知ってるわけ。」
「・・・・だから?」
「さっきの酷い振り方ばらされたら、中等部からも怖い人たち来るかもよ?証拠の写真撮ったし!」
そういってニヤっと笑い、携帯の画面を見せた。
「・・・・・・・・隠し撮り?趣味悪。」
「・・・・・・・じゃ、協力してくれるよね?」
「・・・・・・・・・・・・・いや、意味わかんないんだけど」
「協力してくれるよね?」
「・・・・・・」
でも、もしほんとにバラされたら、大変だよね・・・
でも、を裏切ることになるのはやだ・・・・
でも、怖い人来たらみんなと仲良くできなくなるしなぁ・・・・
でも、コイツの命令に従うのも癪に障る・・・・・
「ねぇ。黙ってたらわかんないんだけど。」
そういって越前は顔を近づける。
・・・・・・その目で見ないでー怖い怖い怖い・・・
てか!顔近すぎ・・・怖さ増すんですけど・・・・
さっきちょっとコイツ良い奴かもって思ったの、完全に間違いだったわ・・・
あり得ない、あり得ない、あり得ない。
怖い、怖い、怖い。
「ねぇ。どうなの?」
「・・・わかった!わかったから離れて!!」
・・・・・・・・・・また・・・やっちゃった・・・
また、自分を守るために、やっちゃった・・・
なんであたしって押しに弱いんだろう・・・
・・・を裏切ることになっちゃった・・・うう
ゴメンね・・・
「じゃ、よろしくね、。」
「あのさ、何であなたに呼び捨てされなきゃいけないの?後輩でしょ?」
「そっちが呼び捨てで、こっちが先輩付けなんて見下されてるみたいじゃん。そんなの部活内だけで充分。」
「・・・・・・あたしもとか呼ばれるの、見下されてるみたいで嫌なんだけど。」
「じゃ、で。」
「は?ほんと、越前て意味わかんない人だね・・・・」
「だから朝言ったでしょ?リョーマって呼べって。」
「何で?」
「名字で呼ばれるの、見下されてるみたいで嫌いだから。」
「じゃ、越前で良いじゃん。」
「・・・・リョーマって言わなかったら、中等部に流す。」
「は!?」
めちゃくちゃだ・・・この後輩・・・
「じゃーね」
「ちょっ・・・まってよ!!」
あたしの家と反対方向にある曲がり道を曲がって、去っていった。
そのときあたしは、
この人のせいで自分の中学校生活がめちゃくちゃになることを知るすべもなく、
ただただ、リョーマの背中を見ていた。