♪〜



微かに聞こえるこの音。



部活がない日はいつも行く音楽室。







♪〜〜♪〜♪〜〜〜







此処でピアノの音を聞き、



此処で君の声を聞く。



中には入らず、ドアの外で。































































音色





































































ある晴れた日。



俺はテニスコートで自主練。



そんなときに、見つけた女の子。







「またあの子も自主練か・・・」







自分の身長よりも高い所にある棒を、



何度も、何度も、跳んで、



何度も、何度も、失敗して、



何度も、何度も、やり直していた。



いつの間にか俺は、練習の手を止めていた。



いつもいつも終わった後に飛んでるあの子。







「キヨ?終わったなら片付けるよー?」







寄ってきたマネージャーに聞く。







「・・・・おい、キヨ。アンタのせいであっくんのこと追いかけられなかったんだからね。」



「・・・・・ねぇ・・・あの子誰?」



「・・・・・・ねぇ。うちの話聞いてた?」



「いいから、あの子だーれー?」



「はぁ・・・あの高飛びーじょ?だよ。」



「ふーん・・・かぁ・・・じゃ俺クールダウンしてくるね!」



「え!?ちょっ・・・キヨ!!」







後ろから聞こえたの声なんてお構いなしに、



俺はグラウンドへ向かう。



















カシャーン







高飛び用の棒が落ちるのが、近くで何度も聞こえる。







カシャーン







という名の子は、



まだ何度失敗しても、何度も飛んでて、俺になんて気づいてない様子。



俺はその姿を見ながら、ただただ何周も走っていた。







女の子なら何人も見てきた。



その中で、特別可愛いって訳じゃない。



でも、



なんか綺麗で、



なんかドキドキするんだ。



だって彼女が、あまりに美しく飛ぶから。



だって彼女が、あまりに輝いているから。



だって彼女が・・・・





































































それから何周走っただろう?



聞こえ続けていた音が無くなったのは。



そのときに初めて聞いた君の声。



棒が落ちる音の代わりに聞こえた声。







「よっし!!飛べたー!!」







俺は思わず、近くで足を止めた。



そして、あの子はようやく俺に気づいて、目があった。



・・・・・・やっとこっち見てくれた。







「・・・・・おめでと。」



「え?」







何を言えばいいのか、わかんなかったから、とりあえず言った。



あの子は一瞬驚いたような顔をしたが、俺に







「・・・・・・うん!ありがと!!」







どくん







不思議な感情をくれた。





































































あれから数日後、此処で君の声を見つけた。



音楽室の窓から見える横顔。



このドアの中に行けば、



もう、弾きにこなくなっちゃうかな・・・?



そんな弱気な俺。



らしくないね。



ねぇ。



覚えてないでしょ?俺のこと。



知らないでしょ?俺のこと。







女の子なら何人も見てきた。



その中で、特別可愛いって訳じゃない。



でも、



なんか綺麗で、



なんかドキドキするんだ。



だって彼女が、あまりに美しく飛ぶから。



だって彼女が、あまりに輝いているから。



だって彼女が、あまりに優しい音色を奏でるから



だって彼女が・・・・





































































それから数日後の雨の日。



いつものように音楽室の前にいた。



「・・・・キヨ?ほんとアンタ最近ばっかり見てるね。」



聞こえてきた、小さなの声。



「・・・・・・・・だって亜久津ばっかり見てるじゃん・・・」



彼女の邪魔をしないために、小声の会話。



「・・・・・・・・・ってかアンタ中入ればいいでしょ。いつまでそこにいるつもり?怒らないと思うよ?」



「うーん・・・・あともうちょっと?」



「はぁ・・・キヨって損な性格だね。どうでも良い子には軽いのに、肝心な子には駄目なんてさ。」



「・・・・もね。」



「でもね、キヨ。行動しなきゃ気づいてもらえないし、言葉にしなきゃ伝わらないこともあるんだよ?」



「・・・・・・・・・」



「あ、あっくん発見。じゃーねーうち、応援してるから。」



そう言って去っていった。



妙にの言葉が耳に残った。





































































ねぇ、俺を見てよ。



あの時みたいに真っ直ぐ。



ねぇ、笑ってよ。



あの時みたいに綺麗に。



ねぇ、思い出してよ。



あの時のこと全部。



ねぇ、ねぇ、ねぇ。





































































“行動しなきゃ気づいてもらえない”





































































知って欲しいんだ、俺のこと。





































































ガラガラガラガラ











そう思って開けたドア。



急いで振り向く君。



・・・・・・・・やっとこっち見てくれた。





































































「いつも俺が聴いてたの、気づいてた?」



「・・・・・・・・・・」







彼女は驚いた表情を崩さない。



でも、その表情の中に分かることがあった。







「気づいてたみたいだね。」







そう言って、俺は笑う。



嬉しくて、嬉しくて。







「・・・・・千石君・・・?」



「あ、良かった。俺のこと知ってたんだ。ラッキー」







今までで一番のラッキー。



君が俺を知っていたこと。



嬉しくて、嬉しくて。







「最近知った・・・・」



ねぇ、



「マジで?」



此処にいて良い?



「・・・・マジです。」



此処で、



「うわーでも、誰?とかいわれなくて良かった。」



君の近くで、



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」





































































“言葉にしなくちゃ伝わらないこともあるんだよ”





































































「ねぇ、今日は此処で続き聴かせてもらっても良いかな?さん。」







あの音色、聴きたい。





































































「・・・・・・・・・・・っ・・・」







途端に泣き出す彼女。



・・・・・何で?



そんな顔させたい訳じゃないのに。



俺はなんか必死だった。







「あっ・・・ゴメンね・・・いきなり・・・・嫌だったらいいんだ。ごめん。」





































































「・・・・・・・違・・・・嬉しく・・・って・・・・」



「え?」



そう言うと、彼女は目を泳がせた。



でも、その後すぐに真っ直ぐ俺を見て、言う。





































































「・・・・・・・・・・・ありがとう・・・・」





































































そういって、最高の笑顔をくれた。



でも、彼女はやっぱり泣いてて。



でも、彼女はやっぱり綺麗で。



俺は思わず頭をポンポンと撫でた。



これから先、もっと君の声聞いてて良いのかな?



君の音色、聴いてて良いのかな?



笑顔で見つめる俺。



まだ泣きやまない君。



女の子なら何人も見てきた。



その中で、特別可愛いって訳じゃない。



でも、



なんか綺麗で、



なんかドキドキするんだ。



だって彼女が、あまりに美しく飛ぶから。



だって彼女が、あまりに輝いているから。



だって彼女が、あまりに優しい音色を奏でるから。



だって彼女が、





































































好きだから。











Fin