♪〜
音調確認。「ラ」を叩けばピアノが鳴る。
あたしは、雨の日にいつもここに来る。
♪〜〜♪〜♪〜〜〜
此処でピアノに歌わせ、
此処であたしも歌を歌う。
なぜ雨の日かって?
だって晴れの日は部活があるから
だって湿気が多い方が歌いやすいから
だって・・・・・
3メートル
いつまで隠れているつもりでいるのかな?
ピアノから3メートル。
ドアの窓から見えてるのにな。
距離にして3メートル。
微かに動くオレンジの髪。
いつも、雨の日はそこにいるよね。
いつも、あたしの歌聞いてるよね。
声を掛けたくても、
あたしはそんな勇気なくて。
声を掛けたくても、
貴方が来なくなるのが怖くて。
誰かに聴いてもらえる喜びを知った今、
一人で歌ってるのは虚しいから、
貴方に聴いてて欲しいから、
気づいてても知らんぷり。
歌え、ピアノ
奏でよ、メロディー
小さなあたしの恋の歌
ある晴れた日。
テニスコートで、貴方を見つけた。
晴れの日は部活ばっかりやってるから、
活動場所があまりに離れすぎてるから、
「・・・・・・・あの人が、千石清純だったんだ・・・。」
距離にして約300メートル先。
有名なテニス部の貴方を、
貴方の居場所を、知りました。
いつも女の子達に囲まれて、
大きな期待と歓声を浴びて、
オレンジの目立つ髪を揺らして、
光り輝いた舞台の上に立って、
ある方向に綺麗な笑顔を向ける貴方。
どくん。
スタート地点に着いたときのように、
いやそれ以上に、高鳴る鼓動。
気づけば視線の先にテニスコート。
小さな、小さな恋の予感。
でも駄目よ。
貴方はテニス部のエース。
あたしはただの陸上部員。
距離にして約300メートル。
あたしの事なんて、知らないでしょ?
あたしの事なんて、見てもくれないんでしょ?
何も知ってくれなくて良い。
何も見てもくれなくて良い。
貴方には、好きな人いるんでしょう?
貴方には、最高の笑顔を向ける人がいるんでしょう?
悲しいだけの恋なんて、したくないもの。
でも
やっぱり知ってて欲しいから。
歌え、ピアノ
奏でよ、メロディー
小さなあたしの恋の歌
届け、貴方に
あと、3メートル
小さなあたしの恋の予感
知ってくれなくて良いなんて、
見てもくれなくて良いなんて、
全部、全部嘘だから
今から知ってよ、この思い
今から見てよ、この思い
貴方に届け、この思い
距離にして3メートル
微かに動くオレンジの髪。
音調確認 「ラ」を叩けばピアノが鳴る
あたしは、雨の日にいつもここに来る
此処でピアノに歌わせ、
此処であたしも歌を歌う
なぜ雨の日かって?
だって晴れの日は部活があるから
だって湿気が多い方が歌いやすいから
だって・・・・・
ガラガラガラガラ
「!」
突然開いた音楽室のドア。
あたしは驚いてピアノを止める。
急いでドアの方を見ると、
「突然、ゴメンね。いつも雨の日に歌歌ってるから、気になって。」
オレンジ色の髪の人。
「いつも俺が聴いてたの、気づいてた?」
「・・・・・・・・・・」
「気づいてたみたいだね。」
そう言って、彼は笑う。
「・・・・・千石君・・・?」
そっと貴方の名前を呼んでみれば、
「あ、良かった。俺のこと知ってたんだ。ラッキー」
貴方はあたしに笑顔を向ける。
「最近知った・・・・」
ねぇ・・・・
「マジで?」
どうして貴方は笑うの?
「・・・・馬路です。」
好きな人がいるくせに。
「うわーでも、誰?とかいわれなくて良かった。」
あたしの事なんて知らないくせに。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・どうして?
「ねぇ、今日は此処で続き聴かせてもらっても良いかな? さん。」
「・・・・・・・・・・・っ・・・」
涙が、あふれてくる。
「あっ・・・ゴメンね・・・いきなり・・・・嫌だったらいいんだ。ごめん。」
「・・・・・・・違・・・・嬉しく・・・って・・・・」
「え?」
嬉しすぎて涙が出て、
嬉しすぎて上手く言葉にならない、
だけど
「・・・・・・・・・・・ありがとう・・・・」
言葉にしなくちゃ伝わらないこともある。
そう言うと、彼はやっぱり笑顔で。
あたしの頭をポンポンと撫でてくれた。
距離にして30センチ。
これから先、もっと距離を縮めたいって思って良いかな?
だから
歌え、ピアノ
奏でよ、メロディー
小さなあたしの恋の歌
届け、貴方に
あと、3メートル
小さなあたしの恋の予感
知ってくれなくて良いなんて、
見てもくれなくて良いなんて、
全部、全部嘘だから
今から知ってよ、この思い
今から見てよ、この思い
貴方に届け、この思い
距離にして3メートル
微かに動くオレンジの髪
音調確認 「ラ」を叩けばピアノが鳴る
あたしは、雨の日にいつもここに来る
此処でピアノに歌わせ、
此処であたしも歌を歌う
なぜ雨の日かって?
だって晴れの日は部活があるから
だって湿気が多い方が歌いやすいから
だって・・・・・
距離が縮むのを期待してたから
Fin